「juggle」 と「ワンオペ」

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2017年11月22日、熊本市の定例市議会で、女性市議が生後7カ月の赤ちゃん同伴で議会に出席しようとしましたが、他の議員に退出を求められ、結局、赤ちゃんは同伴を認められなかったという出来事がありました。

このニュースは、日本における、女性の社会参画が困難な事例として、海外でも関心を呼んだようです。

Japanese politician brings baby to assembly sparking debate

この英BBCニュースサイトの11月24日付け記事には、

“Ms Ogata wanted to show how difficult it is for women to juggle career and children.”

という表現が出てきています。

ここでは「仕事と育児を両立する」を”juggle career and children”と言っています。

「juggle」という動詞はもともと、「奇術をする。ジャグリングをする」という意味をもっています。派生的な用法として「複数のことをうまくこなす」という意味に使われます。「仕事」と「育児」、2つの事柄をうまくこなすさまは、言われてみれば、曲芸のジャグリングに似ています。

「juggle」のように「技」を連想させる言葉に、今年の流行語大賞の候補にも選ばれた「ワンオペ育児」があります。

「ワンオペ」は、「one operation」の略。もともと外食チェーンにおいて、一人ですべてをこなさねばならない就労形態が問題視されたときに使われ始めました。それが育児の現状にも流用され、母親だけに負担がかかる育児を表す言葉となったのです。

「ワンオペ育児」をこなす母親を見ていると、千手観音のように何本もの見えざる手を操っているのでは? と思えてきます。

果たして女性が生きていくうえで、そこまでの「技」や「器用さ」が必要なのでしょうか。

器用にできない人にもチャンスがある社会であってほしい。
器用な人が疲れて果ててしまわない社会であってほしい。
何より赤ちゃんの泣き声に寛容な社会であってほしい。

賛否両論ありますが、この女性市議の問題提起が、未来の女性を今より少しでも生きやすくしてくれることを願わずにはいられません。

校正者/編集者。国語辞典の編集、日本語教育関連書籍の編集、ウェブコンテンツの制作を経て、現在はフリーで校正、編集、執筆のお仕事をしています。ネット古書店「書肆こいぬ」店主。長年の相棒犬、桃を見送ってから、5匹の猫と暮らしています。
書肆こいぬ : http://www.coinu.com/