よそのお宅の子ども用本棚ってどんな感じ?
普段なかなか目にする機会のない、一般のご家庭のプライベート空間をのぞいてみました。
「あの子の本棚」No.007は、Rくん(4歳)とS子ちゃん(5か月)の本棚です。
──お子さんたちのために購入した絵本で印象に残っているものはありますか。
母・和音さん:
かがくいひろしさんの「だるまさん」シリーズ(ブロンズ新社)です。
息子のRは、赤ちゃんのときから絵本にまったく興味がなく、本はかじる、破る、高速でめくるなどで、そこに何が描かれているかなど目に入らないような扱いをしていました。読み聞かせなどもってのほか。児童館等で保育士さんが読んでくれる時でも、ひとり脱走して別の事をして遊んでいる状態でした。
子どもを膝に乗せ、一緒に絵本を読むことを楽しみにしていた母の夢は打ち砕かれました。
そのRが絵本に描かれていることに初めて食いついたのが、療育センターで先生が読んでくれた「だるまさん」シリーズだったんです。2歳半位でした。
「だ・る・ま・さ・ん・が」に合わせて身体を揺らして、「どてっ」とだるまさんと一緒に転ぶ。その様子を見たときは本当に感動しました。
見立てや想像が苦手なRが、この紙の中に広い世界があることをついに気づいたのだ!と。すぐに家でいつでも見られるように買いました。
4歳の今でも、すっかり暗記しているのにも関わらず、よく引っ張りだしてきて、ジェスチャー付きで読んでいます。ひらがなも、「の」「て」「め」などこのシリーズに出てくるものから自然と覚えていったと思います。
──お子さんたちのお気に入りの絵本は何ですか。
現在のRは、電車の本が好きですね。ふりがな付きの鉄道路線図の本──『めざせ鉄道博士! 日本全国鉄道路線地図』(地理情報開発)──や、車両図鑑などをじーっと眺めたり、横目で追ったりしています。
『でんしゃはうたう』(作:三宮麻由子 絵:みねおみつ/福音館書店)も好きで、自分でアナウンスをしています。『もこもこもこ』(作:谷川俊太郎 絵:元永定正/文研出版)や『しましまぐるぐる』(絵: かしわらあきお/学研)など形と色がはっきりしていて、抽象的な内容の本も好きです。目で見て楽しいもの、リズムがあるものが良いみたいですね。
──お子さんたちとの絵本の時間で、印象的なエピソードがありましたら教えてください。
今年の1月に娘のS子が産まれたのですが、目がだいぶ見えるようになってきたので、最近赤ちゃん用の絵本を見せるようになりました。S子はRと違ってじーっと絵を見るんですね。笑うこともあるんです。
その様子を見ていたRが、次の日から同じ絵本、『ピヨピヨだあれ?』(作・絵:いりやま さとし/学研)を持ってきて「S子ちゃん、えほんよー」ってS子に見せるんです。
それが私の読みかたや見せかたそっくりで、とても面白いです。
だって彼自身はかつて見向きもしなかった本なんですよ(笑)。ようやく日の目を見ることができました。
──和音さんが手元に置いておきたい絵本とはどんなものですか。
何度見ても楽しめる本ですね。色々な楽しみ方がある本と言っても良いでしょう。
ストーリーを追うだけでなく、『きんぎょがにげた』(作・絵:五味太郎/福音館書店)のように絵の中にあるものを見つけたり、いわいとしおさんの「100かいだてのいえ」シリーズのように数えたり、絵を細かく見ると新たな発見があって楽しいですよね。
「だるまさん」シリーズのように身体を使ってみたりするのもいいですよね。『はらぺこあおむし』(作・絵:エリック・カール 訳:もりひさし/偕成社)は、歌になっている上に穴が空いた楽しい仕掛けもあって、何度も楽しめますよね。
Rが好きな路線図の本も、面白い駅名を知ったり、ここからここに行くにはどうやっていったらいいか?と考えたり、すごろくのように使ってみたり、いろいろ楽しめます。路線図はほんと面白くていろいろ想像して時間を忘れられるので、大人にもオススメです。
──お子さん用の本棚づくりで意識していることは何ですか。
子どもがいつもいるリビングの手に取りやすい場所に置いてあります。今は興味がなくてもある日突然読み始めたりもするので、少し難しいかなと思う本でもそのまま置いています。
本のラインナップは、やはり絵が印象的な本や図鑑のようなものが多いですね。昨年からは幼稚園でもらう本も多いです。
──和音さんご自身が好きな絵本は何ですか。
子どもの頃好きだった絵本は、エリック・カールの『たんじょうびのふしぎなてがみ』(訳:もりひさし/偕成社)です。
『はらぺこあおむし』も好きでしたが、同じ作者のこの本もページの形状が面白く、色彩も鮮やかです。そして謎解きの要素があって、ひとつひとつ謎の形の正体がページをめくるたびに判明していくワクワク感が好きでした。
家にはなく幼稚園の本だったのですが、毎週のように借りていたのですが、私がこの本を好きだと知った祖父が、この本と同じように形や絵を織り交ぜた誕生日カードをくれて、それがとてもうれしかったですね。