教育には雑多さも大事!? 子どもの日常と本の世界が循環する面白さ

よそのお宅の子ども用本棚ってどんな感じ?
普段なかなか目にする機会のない、一般のご家庭のプライベート空間をのぞいてみました。「あの子の本棚」No.11は、たっくん(4歳)の本棚です。

小学校の理科の先生だったあやねさんが、お子さんとの時間で再発見した本の魅力とは?

──お子さんのために購入した絵本で印象に残っているものはありますか。
母・あやねさん:
『もりのおばけ』(作:片山健/福音館書店)。

行きつけの児童書専門店で、息子が突然持ってきて離さなかったので購入。絵柄は決してかわいくないし、おばけはグロテスクだしモノクロなのに息子は食い入るように何度でも読むんですよね。子どもの好みって大人の想像とは違うんだなあとしみじみ思った一冊です。

──お子さんのお気に入りの絵本は何ですか。
『しゅっぱつしんこう!』(作:山本忠敬/福音館書店)。

1~3歳の2年半通っていた親子サークルの保育者さんが出合わせてくれた絵本です。一昨年の春に出合ったときは毎日何回も読まされ、息子は、一人でも時間があればじーっと眺めていました。本来は2歳児向けなんですがいまだにお気に入りのようで、「はつかり(表紙の特急電車の名前)読んで!」と言われます。たまに絵本そのものを電車や駅舎に見立て、電車のおもちゃと一緒に走らせています。そんな遊び方もあるのか……。

──お子さんとの絵本の時間で、印象的なエピソードがありましたら教えてください。
私が出産前に理科の先生をしていたこともあって幼児教育のなかで理科をどう伝えているのか知りたくて、去年1年『かがくのとも』(福音館書店)という年長向け科学絵本のシリーズを定期購読していたんです。そのなかにはきのこの一生を扱ったものやら、ハエトリグモという蜘蛛の一種をあつかったものやらうんちに擬態する虫を集めた図鑑のようなものやらいろいろありました。

それらを読むようになってから、道を歩いていると息子が「あ!ハエトリグモだ~」「きのこはえてるねえ」などなど発見を教えてくれるようになって散歩が楽しくなりましたね。それを見てこうやって本の世界と日常は循環させるといいのか、と気付かされました。その分道草を食う時間が長くなりましたけどねっ(笑)

──手元に置いておきたいのはどんな絵本ですか。
大人の都合や願いを押し付けず子どものもつ世界観に寄り添って楽しませてくれるものでしょうか。絵本なり本って読み手の世界をひろげるためにあるものっちゃあるものなんですが、あからさまに啓蒙しているものってほっぽり投げたくなるんですよね(笑)

福音館書店や岩波書店のものは、絶妙な感じで子どもに寄り添いつつ子どもに新しい世界を見せてくれるから、いつもいい仕事しているなあ~と感銘を受けます。そしてついその2社の絵本ばかりになってしまう……。

──お子さん用の本棚づくりで意識していることは何ですか。
・本のサイズを段ごとになるべくそろえること。
・子どもにも読めそうな大人の趣味の本もちょっととなりに置いてみること。

同じ出版社の本が多いため、本のサイズをそえやすいのかもしれません。大人の本をミックスしているのは、息子を遊ばせつつ私も本を流し読みするためだったんですけど、意外と息子が私の本に手を出して読んでいるんですよね。淡水魚の図鑑とか親子で行けるオススメの山10選とか。そこから魚や草木に興味を持ったみたいなので、それはそれで子どもの世界を広げるきっかけになっているのかもしれません。教育には雑多さも大事!?

──あやねさんご自身が好きな絵本は何ですか。
『ねこのくにのおきゃくさま』(作:シビル・ウェッタシンハ 訳:松岡享子/福音館書店)。

自給自足ですべてをまかなう働き者の猫の国に謎の二人組がやってきて踊りと歌を披露するのだけれど……というお話。

私は、15年位趣味で音楽(合唱→ギター→和太鼓と楽器を転々としつつ)を奏で続けているんですが、仕事や育児との兼ね合いに苦悩することもちょくちょくあります。こんな大変な思いをして、社会のためになるわけでもない娯楽を続けてなにをやっているんだろう……みたいな。とくに演奏会直前に子どもが熱を出したりすると精神的にキますね。

でもこれを読んで、音楽や舞踊というのは見ている人も演じる人も幸せにするといいますか、生きていることの喜びを思い起こさせるものなのだと気付きました。社会を変えるような革新的なものではないけど、人が人足り得る根源的な部分に働きかけるものだから続けて大丈夫なんだ!と背中を押してもらえたような。

あと、マイノリティがどう戦略をたてるとマジョリティに新しい概念を受け入れてもらえるかといういいケーススタディにもなっているので、ビジネス書としても良書ですよ!

──あやねさんにとって「読書」とは?
自分が極めたい道の水先案内人であり、自分が実体験できないことを追体験できるもの

ヨガ哲学の本なんかよく読みます。今は亡き偉大なヨギーニの言葉とか。あとは音楽をやっているので芸術論なんかも。また、子育て中はヒマラヤとかキリマンジャロとか登るのは難しいから、山岳小説や登山家のエッセイを読んで私の日帰りハイキングの先に広がる山の世界にうっとりするのが好きです。

Q. 読み聞かせを含むお子さんの一週間の読書時間は?
夕ご飯後10~15分と寝る前の10~15分を毎日なので、3時間前後。幼稚園がすごく絵本を大切にする園なので、本当のトータルは倍くらいになるのかもしれません。
Q.図書館の利用状況は?
まったく利用してないですね……そういえば。近所の本屋が児童書充実しているので、ついそっちで立ち読みして買っちゃうことが多いかも。
Q.一か月のお子さん用の書籍代は?
月刊絵本を園で2冊定期購入していてそれが800円位。本屋で買うのが1、2冊で合わせて2000円前後。
Q.一か月のお子さんの「レジャー」「おもちゃ」「本」「習い事」費用の割合は?

野遊びの交通費と水族館や博物館の入場料がけっこうかかっているような……。でも実際に実物を見たり体験したりするのは大事なので削れないですね。そのぶんおもちゃや服はもらいものです済ませています。空き箱ひとつあれば電車にも車にもビルにもなるし!

あやねさんが子どもの教育(理科中心)、日々の家事と子育て、ニュースについてつづるブログ「さそりのしっぽ」。

「想像力」と「創造力」を刺激する、親子参加型の絵本ワークショップを企画・運営する団体です。子育て期の女性たちが教育やビジネスの現場で培ったスキルや経験を生かして、親と子の学びの場をつくっています。
くまのこ絵本工房 : http://www.facebook.com/kumanokoehon/